一般的な人工受精は、あらかじめ取り出した精液を洗浄選別して子宮に注入する方法でしたが、体外受精は、さらに卵子も事前に取り出しておいて、受精させてから体内に戻す方法です。
人工受精でも妊娠できなかった場合に体外受精を使いますが、女性の体に負担が大きいのと、費用も保険が適応されますが実費で40万円から50万円くらいかかりますので、人工受精のように気軽にはできません。
「人工受精も5回以上したけれどダメだった」というケースや、卵子が卵管を通れない、子宮内膜症で骨盤内に癒着がある、精子が卵子の膜を破って受精するほどの運動力がない、もう出産年齢の限界に近い・・といったケースで「最後の切り札」としては、やってみる価値のある不妊治療です。
体外受精で妊娠する方法にもいくつか種類がありますが、まずは一般的な体外受精の手順から解説します。
1、生理が始まる1週間前くらいから排卵の時期をコントロールする薬(スプレキュア)を鼻に噴霧器で吹きつけます。
2、生理が始まって3日目から、更に排卵誘発剤を毎日注射します。そして、超音波検査やホルモン検査を毎日やって、卵子の成熟度を見ます。
3、卵子をくるむ卵胞が直径18mmに成熟したら、hCG注射(排卵誘発剤)を打って、36時間後に採卵します。
4、麻酔をかけるので手術前夜は夜10時で飲食禁止になります。採卵当日は、男性は病院で精液を取るか、自宅で取ったものを2時間以内に持ってきます。
5、精液は洗浄、濃縮され1ccあたり精子が1万~5万個になるように調整されます。
6、全身または局所麻酔をして、膣から経膣超音波のプローブにとりつけた長い針で卵胞の位置を確かめながら卵子を卵胞液ごと吸い取ります。処置にかかる時間は10分ほどで、麻酔で眠っているので痛みはありません。
7、卵胞液から成熟卵を複数取り出して、容器の中で精液と混ぜて培養します。
8、受精後3日目に8分割するまで待ちます。
9、分割の状態が良い胚を2~3個、子宮にもどします。(胚移植)
10、胚が子宮内膜に入りこむのは4日後です(着床)。この間はなるべく安静にしています。
一般的な体外受精の手順は、以上です。
卵子がたくさん採取できた場合、余った受精卵(胚)を凍結しておいて次のチャンスに移植することもできます。
【ギフト法とジフト法による体外受精】
・ギフト法は、一般的な体外受精とほぼ同じ手順ですが、採取した卵子と精子を一緒に卵管采から卵管内に入れて、自然に近い状態で受精させる方法です。
体外受精より妊娠率が高くて、コストも安いのですが、施術の際に腹部に穴を開けて腹腔鏡を入れないといけないので、全身麻酔や入院の必要があります。
・ジフト法は、体外で受精させた胚を子宮ではなく卵管に戻す方法になります。これによってギフト法より妊娠率が高くなります。
【顕微受精による体外受精】
顕微受精は、体外受精を一段階高度にした不妊治療法です。
一般的な体外受精では、容器内で卵子と精子を一緒にして自然に受精するのを待っていたわけですが、精子に元気がなくて卵膜を破れなかったり、精子の数が少な過ぎた場合は受精できないわけです。
そこで、どうしても受精させられない弱い精子でも受精できるように開発されたものが、「顕微受精」です。
活発に動く精子の濃度が低い場合、精子奇形率が高い場合、精子の数がほとんどない場合に限って、体外受精は顕微受精に切り替えられます。
顕微鏡で見ながら、正常な精子を1匹選び、髪の毛1本ほどの大きさのガラス管のなかで、精子を0.1mm大の卵子に直接注入するのです。
その中でも方法は3つあります。
・透明帯開孔法:卵子のまわりの透明な膜に小さな穴を開けて、精子が入りやすくしてやる方法です。
・囲卵腔内精子注入法:それでもうまく穴から入れない精子の場合は、卵子のまわりの透明な膜の中に注入してやる方法です。
・卵細胞質内精子注入法:精子または精子細胞を無理やり直接卵子の中に注入してやる方法です。
では以上が体外受精の解説ですが、基本的にどの方法も女性の体に負担が大きく費用もかかる方法です。
さらに顕微受精となれば、卵子に傷をつけることになりますし、もともと精子が弱いわけですので、生まれてくる赤ちゃんに遺伝的な問題が発生する可能性は高くなります。
まずは、人工受精・体外受精に頼らなくても良い体作りを頑張りましょう。不妊の原因は、ほぼ100%が生活習慣ですので、正しく取り組めば治るものです。
ストレス解消・栄養バランス・有酸素運動・睡眠・・・これを完璧に整えて続けたら、ちゃんと赤ちゃんは授かれますよ(^_^)