私達の生命を維持するために必要な酸素も栄養も、すべて血流に乗って全身に運ばれます。そしてこの時に、血液を全身に巡らせるために、ポンプのように働いているのが心臓です。

そして、心臓から押し出された血液が大動脈、細動脈、毛細血管へと流れていきます。つまり太い血管からとても細い血管に至るまで、すみずみに流れて行きます。また、身体のすみずみに酸素や栄養を届けたあとは、二酸化炭素や身体にとって不要なものを回収して、静脈を通って再び心臓に戻って行きます。

例えば、心臓の働き方が気まぐれで、ちから一杯押し出したり、急にやる気をなくして力を抜いたりしたら、体のすみずみにまで血液が回りませんよね。ですから心臓は、縮んだり(収縮)、膨らんだり(拡張)しながら、一定のリズムで血液を送りだしています。

このリズムはだいたい1分間あたり60~70回ぐらいで、手首などを触ると分かる脈拍は、心臓がポンプとして働いているドクンドクンというリズムを示しているわけです。

また、頭の先から足のつま先まで、全身の毛細血管にまでまんべんなく血液を巡らせるには、それなりの強さの力が必要です。この心臓の力で押し出された血液が、動脈の内壁を押し出す力のことを「血圧」というわけです。

■血圧には収縮期血圧(上)と拡張期血圧(下)の二種類がある

心臓は1日に約10万回も収縮と拡張を繰り返しながら血液を送り出しているので、動脈の中の圧力すなわち血圧は心臓の収縮、拡張に応じて変動します。

心臓が収縮して血液を押し出した瞬間は、血管にいちばん強く圧力がかかります。これが収縮期血圧(最高血圧)です。いわゆる『上の血圧』と呼ばれるものです。

そして、収縮した後に心臓が膨らむ(拡張する)ときには、圧力が最も低くなります。これが拡張期血圧(最低血圧)です。いわゆる『下の血圧』です。

そして、収縮期血圧と拡張期血圧のどちらが高くても、「高血圧」といいます。

■高血圧とはどういう状態か?

血圧が高いということは、血管の壁に内側からかかる圧力が通常より大きいということです。強い圧力で常時押され続けていれば、血管の壁に悪い影響を与えることになり、それがいろいろな疾患の引き金になります。

収縮期血圧『上の血圧』が140mmHg以上、あるいは拡張期血圧『下の血圧』90mmHg以上が高血圧です。そしてまた、どちらか一方でも超えれば高血圧と診断されます。拡張期血圧は正常で、収縮期血圧だけ高い人もいます。このような高血圧を収縮期高血圧といいます。

正常とする血圧には幅があります。ですから、正常範囲内であっても、望ましい血圧(至適血圧)は上が120、下が80未満とされています。

■高血圧は心臓病や脳卒中の引き金になる

高血圧の状態が続くと、心臓は過重労働に対応しようと心臓を動かす筋肉(心筋)を増やして、大きくなります。これが心臓肥大です。悪化すると心不全になることもあります。

また、血管が高い圧力にさらされることで、動脈硬化を起こします。この動脈硬化は全身に起こり、血管の中が狭くなって血液が流れにくくなります。また、こうして血流の滞ったところに血の塊ができて血管が詰まったり、血流が止まったりするということにもなります。

心臓の血流が一時的に滞ると狭心症(きょうしんしょう)に、血管が詰まると心筋梗塞(しんきんこうそく)になります。また、これが脳で起こると、脳梗塞(のうこうそく)になります。さらには、動脈硬化でもろくなった脳内の血管が破れると、脳出血(くも膜下出血など)になります。

心臓も脳も生命維持に直接関係しているため、命の危険にさらされます。また、血管障害は後遺症が残ってしまうことが多いですので、その後の生活に支障が出ます。

ただ、たいていの場合はいきなり血圧が急上昇するということはありません。じわじわと少しずつ上がっていきます。しかも、これといって症状も出ませんから、なかなか自覚しにくいのです。だから怖いのです。

深刻な状況になって初めて気がつくことから「サイレントキラー」なんて呼ばれています。高血圧は放置しておくと、脳卒中、動脈瘤、心不全、狭心症、心筋梗塞、腎障害などが起こるリスクを高める、恐ろしい病気なのです。

■高血圧は腎臓にも負担をかけ糖尿病になる

心臓病や脳卒中のほうが目立つので意外に知られていませんが、高血圧による腎障害も少なくありません。人工透析を受けるようになる原因の第3位が高血圧などによる腎硬化症なのです。

腎臓は血液をろ過して老廃物を尿にして体外に出すという働きを持っています。そのため腎臓には、毛細血管が多く集まっています。動脈硬化が起こって、その毛細血管の血流が悪くなると、腎臓の機能が低下してしまうのです。

人工透析導入原因の第1位の糖尿病も、高血圧を悪化させる因子を持っているので、高血糖と高血圧が重なると悪循環になり、、腎臓も大変なことになりやすいわけです。

■高血圧と脂質異常症(高脂血症)の関係

脂質異常症は、動脈硬化を引き起こす最大の危険因子ですが、高血圧を併せ持つことが多いことが知られています。血圧が上がることで血管の内側に傷がつき、そこからコレステロールが侵入しやすくなることで、動脈硬化が進みます。

心臓病や脳卒中を引き起こす血栓もここから生じます。これも、危険因子が複数重なるメタボリックの悪い法則なのです。

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そもそも高血圧・動脈硬化とは何でしょうか?」の解説ページです。