一般的な腰痛の原因と言えば、重いものを持ち上げた・・変な体勢でかがんだ・・ひねった・・というようなものが多いですが、近年は簡単に解明できない腰痛の原因が増えています。
■肥満と腰痛の関係
腰痛になっている人には、体重が重い人が多いというデータもありますが、太りかたによるようです。単に体重が重いだけでは、腰痛にならないというデータもあります。
ただし、膝などの関節は、体重と関係します。腰も椎間関節があり、体重が重いと変形には影響します。
肥満には、中年男性に多い内臓型肥満、女性に多い皮下脂肪型肥満があります。内臓型肥満は無呼吸や脂肪肝になりやすく、皮下脂肪型肥満は変形性関節症になりやすくなります。
とくに若いときの肥満は、脂肪細胞の代謝を変化させ、一生に影響してしまうので注意が必要です。一日の活動に歩行などの有酸素運動を取り入れ、300キロカロリーの消費エネルギーのアップによってダイエットに挑戦しましょう。
超肥満症となってしまうと、たんぱく質などの栄養不良、摂食障害などが発生するため、胃の部分切除などの外科的手術が必要となってきます。
■天気が悪くなる前に腰痛が強くなる?
「腰痛もちの人は天気の予測ができる?」などといわれることがありますが、これに関するはっきりとした証明はされていません。
しかし、長年腰痛を診ている腰痛の専門家の研究では、どうやら低気圧が腰痛に関係があるようです。
これは推論ですが、野生動物の世界では、動物は、雨が降ってくる前に、身を守るために急いで移動します。そしてまた、その移動する動物を獲物として獲得するために、多くの動物が移動します。低気圧がもたらす降雨に伴う動物たちの一連の行動が、「恐怖」と「闘争」をつかさどる交感神経を活発化させていたのが、気圧の低さそのものが、じかに交感神経に影響するようになったと思われます。
私たちの体でも、低気圧と交感神経のあいだに関連があって、交感神経が高まることで、交感神経由来の疼痛が引き金になるのでは?と考えています。
また、寒さと腰痛については、気圧変化より反応はゆっくりですが、関連があるという動物実験があるようです。
■タバコの吸いすぎ・酒の飲みすぎも腰痛の原因?
腰痛は多くの人が経験しますが、腰痛になりやすい人となりにくい人が存在します。
統計的に、発症因子には、性別・年齢・身長・体重・姿勢・結婚・収入・学歴・精神的状況などがあります。また、仕事上での危険因子としては、重量物運搬・長時間の座位・前かがみなどの不自由な姿勢・腰をひねったりする不意の動作・職場環境などが報告されています。
重量物の運搬でも、重くなるほど腰痛が起こりやすいようです。
そのほかにも腰痛の既往歴や肩こり、ストレスなどが危険因子として挙げられており、過去に腰痛を経験したことのある人はその半数が現在も腰痛を抱えており、また、肩こりのある人は7割、ストレスのある人は4割が腰痛をもっています。
危険性でいうと、腰痛経験者は未経験者の約10倍、肩こりのある人はない人の約3倍、腰痛になりやすいという結果が報告されています。
また、嗜好品については、タバコ喫煙量が多いほど、飲酒回数が多いほど、腰痛有病者の比率は高くなっています。
そして、85%の人が一生のうちに1回は腰痛を経験し、大多数の腰痛は2・3週間で軽快しますが、再発率は2年以内が30%、10年で80%です。そして約5%が慢性腰痛化するといわれています。
■ハイヒールと腰痛の関係
足を美しくみせるために、女性はハイヒールをよく履きます。
ハイヒールが外反母趾など足によくないのは知られていますが、腰痛に影響があるのでしょうか?
約7センチのハイヒールを履いた実験によると、若い人の場合、ハイヒールによるかかとの位置の変化を、膝や股関節など腰より下の部分で矯正(代償)することが多く、直接、脊椎の形に変化をきたすことは少ないそうです。
しかし、腹筋や背筋の弱い人がハイヒールを履いて膝や股関節に無理な姿勢を続けると、骨盤が前に傾いてしまい、腰椎のそりが強くなって腰痛に影響があるようです。
腰痛で悩んでいる人には、ハイヒールはおすすめはできません。
しかし、仕事柄ヒールの高い靴を履かなければならない人や、足腰や膝が痛くてもハイヒールが履きたいという人もいると思います。腰痛を予防するには、膝を曲げないように意識して歩く、腹筋や背筋を鍛える、などの注意が必要です。
■長期の安静は腰痛によくない?
腰痛になると動けなくなるので、とりあえず安静にして寝ることが多いと思います。ではどれだけ安静にしていればよいのでしょうか?
最近の研究では、安静の程度によってはかえって腰痛を長期化させてしまうことがわかってきました。
ギルバートらの研究では、いわゆるぎっくり腰で代表される急性腰痛に対する安静期間について検討したところ、二日間の安静と七日間の安静では、多少痛みがあっても安静期間を二日間にとどめていたほうが、その後の改善がよいという結果が報告されています。
不必要な安静はかえって腰痛を長期化させてしまうようです。
原因としては、長期の安静によって腹筋、背筋の筋力が低下して腰を支える力が低下してしまうことや、腰椎の関節に拘縮(固くなること)が起こって体が固くなったような状態になり、それらが新たな痛みをつくってしまうことが考えられます。
■触っただけで腰が痛いと感じる理由
触る感覚(触覚)と痛みの感覚(痛覚)は、別の神経をたどって脳に伝わります。
しかし、痛みを長い期間感じていると、脳で痛みを覚えこんでしまったり、触覚の神経が誤って痛覚の神経と連結してしまったり、交感神経が痛覚の神経に連結してしまったりします。
こういった神経の連結を発芽と呼びますが、治りづらい慢性腰痛の原因として考えられています。このような状態になると、通常では感じることのできない小さな刺激を明確に痛みと感じてしまったり、本来別の刺激である、触るという刺激を痛みとして感じたりしてしまいます。